EUの関税の仕組みは?CNコードと関税率、規制や協定を解説
EUへの商品販売を検討していて、関税の仕組みが複雑でよくわからないと感じたことはないでしょうか。関税率の計算方法や必要書類を把握しないまま出荷すると、想定外の追加費用や通関トラブルを招くことがあります。
本記事では、EUの関税の仕組みから計算方法、関税率を特定するCNコードの調べ方、日EU経済連携協定を活用した関税の削減方法まで、越境ECを始める事業者が押さえておきたいポイントを解説します。
EUの関税の仕組み
EU(European Union:欧州連合)は2026年時点で27カ国が加盟する政治・経済統合体です。加盟国同士の取引には関税がかからず、単一市場として商品が自由に行き来する一方、EU以外の国と取引をする場合は、EU共通の関税率が一律に適用されます。
例えば日本からイタリアへ商品を輸出すると、イタリア独自の税率ではなく、EU全体で定められた税率が適用されます。この荷物がイタリアからドイツやフランスへ再輸出される際は、EU内の移動なので追加の関税は発生しません。つまり「イタリアの関税」は存在せず、EU加盟国では一律に「EUの関税」がかかる仕組みになっています。
関連記事:越境ECの関税とは?主要国の関税制度や注意点を解説
EUの関税の計算方法
EUの関税額は、商品代金に運賃と保険料を加えたCIF価格をもとに算出されます。CIF価格に品目ごとの関税率をかけ合わせた金額が、実際に納める関税です。商品の値段だけで計算すると実際より安く見積もってしまうので注意しましょう。
例として家具を50万円で仕入れ、輸送費が8万円、保険料が2万円かかったとします。CIF価格は合計60万円となり、関税率が3%であれば納税額は1万8,000円になります。以前はサプライチェーン内で複数の取引が絡む場合、最初の取引価格(ファーストセール)を基準にして関税額を抑えられましたが、2016年の制度改正でこの方法は廃止されました。現在はEU向けの直近の取引価格(ラストセール)が基準になっています。
EUの関税の種類
EUの関税は、主に従価税・従量税・混合税の3種類に分けられます。それぞれ課税対象が異なり、扱う商品によって計算方法も変わってきます。
関税の種類 | 特徴 | 商品例 |
従価税 | CIF価格に対して一定の割合を課税する方式。EUに輸入される工業製品の多くにこの関税が適用される | 家電、衣料品、雑貨 |
従量税 | 重量・容量・個数など、数量を基準に課税する方式。価格に関係なく課税されるため、安価な商品ほど負担率が高くなる | ワイン、小麦、砂糖 |
混合税 | 従価税と従量税を組み合わせた方式。従価税と従量税のどちらか税額が高い方(一部の品目では低い方)を課す選択税と、二つを同時に適用する複合税がある | 加工食品、乳製品、精肉 |
販売するのが工業製品であれば、従価税が適用されることがほとんどでしょう。ただし農産物や食品を扱う場合は、従量税や混合税が適用される可能性が高いので、自社商品がどの区分に該当するか、事前に確認してください。
EUの関税率を特定するためのCNコード
CNコードは8桁で構成されるEU独自の商品分類コードです。輸出入の申告や関税率の決定に使われます。基礎になっているのは、世界税関機構が定めた世界共通の分類基準であるHSコードです。
HSコードは6桁構成ですが、CNコードはこのHSコードに、EU独自の2桁を追加した形になっています。日本の輸出統計品目番号もHSコードがベースですが、桁数や分類が異なるので、EU向けの申告ではCNコードが必要です。
革靴のCNコード「6403.99.00」を例に見てみましょう。
- 頭4桁「6403」:「ゴム・プラスチック・革製・コンポジションレザーのいずれかの外底と革製アッパーを持つ履物」という分類を表す
- 上6桁「6403.99」:世界共通のHSコード。「99」は「その他」を意味し、細かい種類分けにあたる
- 全8桁「6403.99.00」:EU独自の分類であるCNコード。末尾の「00」は、これ以上下位区分がないことを示す
申告時にコードを間違えると、追徴課税や貨物の差し止めといった事態に発展しかねないので、正確な特定を心がけましょう。
CNコードの調べ方
CNコードを調べる方法には、自分で検索する方法と、専門家に確認してもらう方法があります。自分で検索してから、専門家に最終確認を依頼することもできます。
欧州委員会の公式サイトを確認
欧州委員会が公開しているTARIC(EU統合関税率表)のデータベースを使う方法です。商品名、あるいは関連するHSコードの上位桁を入力すると、該当するCNコードと関税率が一覧で出てきます。後述する日EU経済連携協定の優遇税率を知りたい場合は、輸出国に日本を指定すれば、通常税率との差がその場で確認できます。表示は基本的に英語ですが、無料で誰でも使えるのは大きなメリットです。
通関士やフォワーダーに相談
CNコードの分類は、容易にわからないことも多々あります。複数の材料を組み合わせた製品や、加工度の高い商品などは特に判断が難しいでしょう。
初めてEU向けに輸出する場合や、コードの判断に迷う場合は、通関士や国際輸送を専門とするフォワーダーへ相談することをおすすめします。専門家の目を通すと、誤申告のリスクを下げられます。
EUの関税の支払い方法
EUへの輸出における関税の支払い方法には、大きく分けてDDPとDDU(旧インコタームズ表現、現在はDAPに相当)の2種類があります。どちらを選ぶかで、関税や税金の負担者が変わってきます。
支払い方法 | 特徴 |
DDP(関税込み持込渡し) | 発送する事業者側が関税や税金を負担する方式。配送業者が輸入時の税金を立て替え、後日事業者へまとめて請求する |
DDU(持込渡し・関税抜き) | 商品を受け取る購入者側が関税や税金を負担する方式。配送業者が通関時に税額を確認し、受取人へ請求・回収する |
DDPを選ぶと、購入者は関税などの追加請求を受けることなく荷物を受け取れます。受取拒否や返品が起きにくくなるので、購買体験を重視する場合に向いた方式です。DDUだと、事業者は関税分の費用を先払いする必要がなく、資金繰りの負担を抑えられます。ただし購入者が想定外の請求に驚き、受け取りを拒否するケースもあるので、注文時点で関税負担について通知する必要があります。
自社の商品単価や販売先の事情なども踏まえ、どちらの方式が合っているか見極めてください。
関連記事:DDU、DDP、および関税について
EUの非課税限度額(デミニミス)の廃止
これまでEUへの輸出では、150ユーロ以下の少額貨物であれば関税がかかりませんでした。しかしこの非課税枠(デミニミス)は、2026年7月1日付けで廃止されています。少額なら関税を気にせず出荷できる時代は終わったと考えたほうが良いでしょう。
廃止後の関税は、取引の形態によって扱いが異なります。VAT登録のあるBtoB取引の場合、これまで通りHSコードに基づいた通常の従価税率が適用されます。しかしBtoC取引は、品目ごとに一律3ユーロの関税がかかる新しい方式に変わりました。多品目の少額商品を販売するビジネスモデルの場合、利益率に大きな影響があります。
制度変更にともない、書類の要件も変更されています。BtoC(VAT登録のあるBtoB輸入を除く)で150ユーロ以下の貨物を送る際は、申告書に以下3種類の製品識別コードの記載が推奨されており、2026年11月1日からは記載が義務化される予定です。
- 販売者が独自に付与するSKUやアイテムコードなどの販売者製品識別コード
- 製造者が個別に割り当てる、標準化されていない製造者製品識別コード
- バーコードなど、国際基準に基づく標準化された製造者製品識別コード(存在する場合)
商品マスタにこれらのコードが正確に登録されていないと、申告書類の準備が間に合わず通関の遅れにつながります。サイトの価格表示やチェックアウト画面で関税負担を事前に伝える仕組みも、併せて見直しておきましょう。
※本項目は2026年8月時点の情報です。制度の詳細は変更される可能性があるため、最新情報を確認してください。
EUの関税を削減できる日EU経済連携協定
日EU経済連携協定(日EU・EPA)とは、2019年に発効した日本とEUの貿易協定です。関税の撤廃・削減を軸に、投資やサービス貿易、知的財産の保護など、多岐にわたるルールが定められています。
2026年時点で、EU側は日本製品の約99%、日本側もEU製品の約94%の品目で関税を撤廃・削減しています。日本の工業製品や電子機器は発効とほぼ同時に多くが無税化され、醤油や清酒といった調味料・酒類も早い段階で撤廃対象となりました。
しかしEU産チーズや日本の自動車のように、撤廃までに時間を要する品目もあります。チーズは16年間の段階的な関税引き下げが行われており、2026年現在も進行中です。発効時10%だった日本車への関税も、8年かけて段階的に下げられています。同じ協定の対象品目でも、恩恵を受けられる時期は商品によってかなり幅があります。
この優遇税率を活用するには、商品が日本原産であることの証明が必要です。日EU・EPAでは自己申告制度のみが採用されており、第三者機関による証明書は使えません。申告方法は、輸出者(生産者を含む)自身がインボイスなどに原産地情報を記載する方法と、輸入者が自ら持っている情報をもとに申告する方法があります。
参考:外務省 日・EU経済連携協定
参考:朝日新聞 日EUのEPAが2月1日発効へ ワインやチーズ安く
EUの関税に関するポイント
EUへ輸出する際は、いくつか押さえておきたいポイントがあります。特に重要なのは次の3点です。
1. 規制や法律の最新情報を確認する
EUの関税制度は、近年大きな変更が続いています。日EU経済連携協定のように新しい優遇制度ができることもあれば、非課税限度額廃止のように既存の制度がなくなることもあります。古い知識のまま出荷を続けると、想定外の関税や書類不備で止められる可能性があるため、EUの公式サイトは定期的にチェックしましょう。
2. 日EU経済連携協定を活用する
日EU・EPAを利用すると、対象品目の関税が無税または軽減されます。ただし優遇税率の適用を受けるには、商品が日本原産であることの証明が必要です。証明がなければ、通常の関税率がそのまま適用されます。
3. 必要書類に正しい情報を記入し準備する
EUへの輸出では、複数の書類を漏れなく揃える必要があります。主に必要となる書類は次の通りです。
- 航空貨物運送状(AWB)または船荷証券(B/L)
- コマーシャルインボイス(商業送り状)
- パッキングリスト(梱包明細書)
- 原産地申告
- 品目によっては衛生証明書やEU適合宣言などの安全基準適合証明書
コマーシャルインボイスやパッキングリストなどの書類は、商品情報や数量を正確に記載することが重要です。しかし手作業での作成はミスが起こりやすく、確認にも時間がかかります。
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EUの関税に関連してよくある質問
ここではEUの関税に関する、よくある質問に回答します。
1. HSコードとは何ですか?
HSコードは、世界税関機構(WCO)が定めた国際共通の商品分類番号です。世界のほとんどの国が、貿易統計や関税分類にこの6桁のコードを採用しています。日本の輸出統計品目番号やEUのCNコードも、すべてこのHSコード6桁を土台にして作られました。貿易の世界共通言語のような存在です。
2. HTSコードとは何ですか?
HTSコード(Harmonized Tariff Schedule)は、アメリカが独自に運用している商品分類コードで、HSコード6桁にアメリカ独自の4桁を加えた10桁構成になっています。HTSコードを使用するのは、あくまでアメリカ向けに商品を輸出する場合で、EUに送る際は不要です。
3. TARICコードとは何ですか?
TARICコードはCNコード8桁に関税や規制義務などに基づくEU独自の分類を加えた10桁のコードです。場合によっては、反ダンピング税や輸入割当などのコードが追加されることもあります。EUの公式データベースTARIC上で確認できるので、輸出の際には、CNコードだけでなくTARICコードも確認しておくと確実です。
4. VATとは何ですか?
VAT(Value Added Tax)は日本の消費税にあたる付加価値税です。フランスは20%、ドイツは19%と、税率は加盟国ごとに異なります。輸入時には関税とは別にVATも発生するので、これらを考慮して価格を検討してください。なおIOSS制度を利用すれば、EU域内で販売された分のVATをまとめて申告・納付することが可能です。
関連記事:EU向け発送におけるVAT、関税、税金徴収の完全ガイド
まとめ
EUとの取引では、加盟国間なら関税はかからず、EU域外からの輸入にはCIF価格をもとにした共通税率が適用されます。税率を特定するにはCNコードの確認が欠かせず、日EU・EPAを活用すれば対象品目の関税を大きく抑えられます。2026年7月のデミニミス廃止により、少額貨物への課税や書類要件も変わりました。制度は今後も変わる可能性があるので、出荷時に最新情報を確認しましょう。
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