クーリエ(courier)とは?EMSやフォワーダーとの違いを解説

クーリエ(courier)とは、集荷から配達までを一貫して管理できる国際配送サービスです。意味やフォワーダーとの違い、出荷手順を解説します。

世界地図の上のミニチュアのトラック

EC事業で輸出入を行う場合、配送手段で、納期やコスト、業務負担が大きく変わります。

国際宅配サービスの一つであるクーリエは、書類や小口貨物を迅速に届けられ、通関や発送手続きが簡単なのが特徴です。

この記事では、クーリエの業務内容から、EMS・フォワーダーとの違い、メリット・デメリット、出荷手順、サービス選定時のチェックポイントまでを解説します。

クーリエとは

飛行機

クーリエ(courier)とは、書類や小型の荷物を航空便で迅速に海外へ届ける「国際宅配便」のことで、その提供会社を指す場合もあります。通関手続きを代行してくれるため、越境ECの配送にも広く活用されています。依頼自体は国内配送とあまり変わらないので、初めて海外発送を行う事業者が利用しやすい点も特徴です。

代表的なクーリエの海外輸送サービスには以下のようなものがあります。

DHL:DHL Express
FedEx:FedEx International Priority
UPS:UPS Worldwide Express
・ヤマト運輸:国際宅急便
・佐川急便:飛脚国際宅配便

各社でサービス内容や対応地域は異なるため、目的に応じて選定しましょう。

EMSとの違い

国際郵便サービスのEMS(Express Mail Service)も、海外発送をする際の選択肢の一つです。EMSは郵便局が提供する公的な配送手段で、クーリエは民間企業によるサービスという違いがあります。両者の主な違いは以下の通りです。

項目

EMS(国際郵便)

クーリエ

運営

公的郵便事業者

民間事業者

配送速度

3〜18日程度(航空便、日数は地域によりばらつきあり)

1〜7日で到着(航空便)

重量制限

最大10~30kg(地域により異なる)

事業者により異なる

通関手続き

関税がかかる場合は、原則として受取人が対応

事業者が代行

保険制度

内容品の価格が2万円を超える場合、最高200万円まで補償あり

オプションで加入可能

納期を重視するならクーリエ、書類や販売目的ではないサンプルなど、内容が軽量かつ非商業的な荷物を安く送りたい場合は、EMSが適しています。EMSは、商業価値のない少額貨物に対して関税が免除されるケースがあり、コストを抑えた発送が可能です。ただし、2025年8月27日よりアメリカ向けEMSの引き受けは一時的に停止されています。

参考:郵便局 EMS

フォワーダーとの違い

フォワーダーとは、荷主の代わりに輸送手段を手配し、通関や書類作成などを一括で代行する「国際輸送の仲介業者」です。クーリエが小口貨物のスピード配送を得意とする一方、多様な輸送手段を利用するフォワーダーは大型・重量貨物や特殊な荷物の輸送に柔軟に対応できる点が特徴です。

項目

フォワーダー

クーリエ

運営

国際輸送専門業者

民間事業者

配送速度

約7〜30日(船便中心・地域により差が大きい)

1〜7日で到着(航空便中心)

重量制限

数百kg〜数トンの大型・重量貨物に対応

事業者により異なる

通関手続き

通関業者やフォワーダーが代行することが多い

事業者が代行

保険制度

個別契約

オプションで加入可能

フォワーダーは、100kg以上の重量貨物やコンテナ単位の輸送、大規模な国際取引に向いています。クーリエに比べて配送スピードは劣るものの、輸送コストを抑えることが可能で、特殊貨物の配送や大量輸送への対応も柔軟です。

クーリエのメリット

クーリエには、他の国際配送手段にはない利便性があります。ここでは、代表的なメリットを3つに分けて解説します。

輸送スピードが速い

クーリエ最大の特徴は、輸送スピードの速さです。航空便を中心としたネットワークにより、海外主要都市へは1〜3日で到着するケースもあります。集荷から配達までを一貫して行うため、荷物の積み替えや手続きの遅延が少なく、スムーズな輸送が可能です。

特に納期が厳しいビジネス用途や急ぎの荷物の発送の際に大きなメリットがあります。EMSやフォワーダーと比べて、スピード面ではクーリエが優位です。

リアルタイムで追跡できる

クーリエを利用した場合、発送から配達完了までの全工程をリアルタイムで追跡できます。配送状況は専用サイトやアプリで確認でき、現在地や通関状況、配達予定日などの詳細が表示されます。これにより、荷物の位置を正確に把握でき、トラブル発生時も迅速に対応が可能です。

ビジネス取引では納期遵守が求められるため、追跡機能の充実は信頼性向上にもつながります。さらに、受取人側も荷物の位置を確認できるので、問い合わせが減るのもメリットです。

発送・通関手続きの手間が少ない

クーリエは、発送から通関、配達までを一括で行うため、手続きの負担が少ないのが特徴です。送り状やインボイスなどの必要書類を用意すれば、あとは業者が通関業務を代行してくれます。

また、業者の通関士が対応するため、書類不備による遅延リスクも少なく、スムーズに輸出が進められます。時間と手間を削減できる点は大きなメリットといえるでしょう。

クーリエのデメリット

海外への迅速な配送や手続きの簡便さが魅力のクーリエですが、便利な反面、注意すべきポイントも存在します。ここでは、利用時に気をつけたい点について解説します。

料金が高い

クーリエはスピードや利便性に優れる一方で、送料が高めに設定されている傾向があります。料金体系は各社で異なりますが、スピード重視で通関代行などのサービスも含まれるため、コストが上乗せされるのです。

特に、重量がある荷物や遠方への配送では、EMSやフォワーダーと比べて割高になりがちです。少量の荷物でも、頻繁に利用する場合はトータルコストが大きくなるため、予算や配送頻度に応じて使い分ける必要があります。

重量・サイズ制限がある

クーリエは小口配送に特化しているため、重量やサイズに制限があります。一般的には1個あたり70kg前後までの荷物が対象です。

サイズにも上限があり、規定を超えると追加料金が発生したり、梱包方法の変更が必要になったりする場合があります。大型貨物や複数個口の輸送では、フォワーダーなど他の手段も検討すべきでしょう。

配送地域に制限がある

クーリエは世界中にネットワークを持っていますが、すべての地域で配送可能なわけではありません。政治的な事情や治安、インフラの問題などにより、一部の国や地域では配送が制限されることがあります。

また、離島や山間部などでは追加料金が発生したり、通常よりも配達に時間がかかるケースもあります。発送前に目的地がサービス範囲に含まれているかを確認し、必要に応じて代替手段を検討することも大切です。

クーリエを利用した出荷手順

クーリエを使って海外に荷物を送る際は、いくつかの基本手順を踏む必要があります。ここでは、出荷前の確認から集荷依頼までの流れを3ステップで解説します。

1. 荷物が送れるものかを確認する

クーリエでは、すべての荷物を送れるわけではありません。各国の法律や各社の規定により、送付が禁止されている品目があります。出荷前には、荷物の内容が規制対象に該当しないかを必ず確認しましょう。特に危険物や動物関連、現金・貴金属などは制限が厳しく、誤って発送すると返送や没収のリスクがあります。

以下の表に代表的な禁止品目を項目別にまとめました。

区分

禁止品目の例

危険物

銃器、弾薬、爆発物、模造銃器など

禁止薬物

麻薬、覚せい剤、大麻、幻覚剤など

動物関連

生きた動物、はく製、象牙、サメのヒレ、遺体・遺灰、ワシントン条約該当品など

貴重品

現金、貴金属、裸石(貴石・半貴石)など

食品類

生鮮食品、乳製品、酒類など

2. 必要書類の準備と荷物の梱包をする

荷物の内容が問題ないことを確認したら、次は書類の準備と梱包を行います。クーリエでは、配送ラベルの「送り状」と、荷物の内容や価格などを記載した「インボイス」がないと出荷できません。さらに、「パッキングリスト」や、食品では「輸入許可証」の事前取得などが追加で求められることもあります。

書類の準備が整ったら、各社のサイズ・重量制限に合わせて丁寧に梱包しましょう。破損防止のために、粘着力の強いテープや緩衝材を使用する必要があります。

書類準備の際には、Ship&coの配送管理ツールの使用がおすすめです。複数キャリアの送り状を一括作成でき、コマーシャルインボイスも自動発行されるため、書類作成の手間を大幅に削減できます。

3. クーリエ便の集荷依頼をする

書類と梱包が完了したら、最後にクーリエ業者へ集荷依頼を行います。各社のWebサイトや専用アプリから日時を指定して申し込むのが一般的です。自宅やオフィスなど希望の場所で集荷してもらえるため、持ち込みの手間が省けます。

業者によっては、当日集荷や時間指定ができるので、急ぎの発送時にも便利です。集荷依頼後は、送り状の控えや追跡番号を保管し、配送状況を確認できるようにしておきましょう。

海外輸送サービスを選ぶ際の確認すべき項目

空を飛ぶ飛行機の翼

海外発送をスムーズに行うには、コストや納期、配送先、荷物の内容、サポート体制など、複数の要素を総合的に比較してサービスを選ぶことが重要です。ここでは、サービス選定時に確認すべき主な比較ポイントについて解説します。

コスト

海外輸送サービスの費用は、送料だけではないため、見積もり時には総額を意識する必要があります。基本の送料は荷物のサイズや重量に応じて決まりますが、それに加えて、燃料価格の変動に応じたサーチャージ、倉庫での保管料金、梱包資材や作業の費用、通関時の手数料などが加算されることがあります。

これらの追加費用は配送会社や発送条件によって異なるため、見積もり時に各社の料金体系を比較し、予算に合ったサービスを選びましょう。

輸送スピード

輸送スピードは、配送工程や地域特性によって左右される点にも注意が必要です。配送先の国や地域によっては、通関に時間がかかったり、現地の物流事情により遅延が発生したりすることもあります。

クーリエは航空便を活用した迅速なネットワークを構築しています。さらに、集荷から配達までを一貫して管理しているため、途中での遅延リスクが少なく、納期の見通しが立てやすいのも大きな利点です。

EMSやフォワーダーでは、配送地域や通関状況によって納期が不安定になることもあるため、納期を重視する場合はクーリエの方が安心といえるでしょう。

対応地域

海外輸送サービスは、対応可能な国や地域に違いがあります。クーリエは世界中に広いネットワークを持ち、多くの国や都市に配送できますが、紛争地域や離島などでは制限がかかることもあります。

EMSも国際郵便として多くの国に対応していますが、地域によっては配達に時間がかかったり、追跡情報が限定されたりする場合があります。

フォワーダーの場合は、事業者によって対応地域が異なります。場所によって別途手配が必要になることもあるため、対応範囲や手続きの負担を事前に把握し、配達先エリアに精通したフォワーダーを選ぶことが重要です。

配送可能な品目

海外輸送では、すべての品目が送れるわけではありません。前述の通り、危険物や薬物、動物関連などの禁止品目に加え、食品や化粧品、電池を含む製品など、条件付きでしか送れない「制限品目」も存在します。

これらの取扱いは、配送先の国や地域、利用する業者の規定によって異なり、国際情勢の変化や法改正により変更されることもあります。誤って発送すると、返送や没収のリスクがあるため、事前確認は欠かせません。各社の公式サイトやサポート窓口で、最新の状況を確認してから出荷準備を進めましょう。

重量・サイズ制限

海外輸送では、荷物の重量やサイズに制限が設けられており、配送業者ごとに制限は異なります。一例として、DHLでは以下のような制限が設定されています。

・単品貨物(1個口)の場合
最大重量:70kg
サイズ上限:120cm(長さ)× 80cm(幅)× 80cm(高さ)

・パレット積みの場合
出荷全体で最大3,000kgまで対応可能。ただし、パレットごとに以下の条件を満たす必要があります。

・パレットあたりの最大重量:1,000kg
・パレットサイズの上限:300cm(長さ)× 200cm(幅)× 160cm(高さ)

各配送業者の対応可能範囲を確認し、重量・サイズの条件を満たすように梱包を行うことが求められます。

サポート体制

海外輸送サービスを選ぶ際は、サポート体制も確認しておきたいポイントです。不慣れな場合、日本語で問い合わせができれば、大きな安心材料になるでしょう。

さらに、トラブルが発生した際に、電話・メール・チャットなど複数の連絡手段が用意されていれば、状況に応じてスムーズに対応を受けられます。サポートの時間やレスポンスまでの所要時間なども、事前に確認しておくと安心です。

配送状況の確認や書類の不備による通関での遅延など、海外輸送では予期せぬ問題が起こることもあるため、迅速かつ丁寧なサポートが受けられるかは大切なチェックポイントです。

まとめ

クーリエは、集荷から通関、配送までを一貫して担う国際宅配便です。配送追跡や通関手続き代行などが標準で提供されており、初めての越境ECでも安心して利用できます。対象国が広く、少量の荷物をスピード重視で出荷したい場合に適しています。

こうした業務を効率よく進めるには、配送管理ツールの活用も有効です。Ship&coを使えば、送り状やインボイスの作成を効率化できるほか、複数の配送会社を一元管理できるため、出荷作業の手間を大幅に削減できます。EC事業者や個人輸出入にも対応しており、海外発送の業務効率化に役立つ実用的なツールです。