海外向けに商品を発送する際、コマーシャルインボイスという書類が必要になります。しかし、輸出手続きに不慣れだと作成に戸惑うこともあるのでしょう。

この記事では、コマーシャルインボイスの役割や正確な書き方のポイントなどを解説します。他の書類との違いや作成時の注意点、効率化の方法についても詳しく説明していきます。

コマーシャルインボイスとは

コマーシャルインボイス(Commercial Invoice)とは、越境ECや国際取引で商品を輸出する際に必要となる税関提出用の書類です。売買された貨物の詳細を記載するもので、輸入国の税関が関税や消費税を計算する際の根拠資料として使われます。

書類には、売主と買主の情報、取引日、商品名、数量、単価、合計金額などが明記され、取引内容を正確に示す役割を担います。日本で使われる請求書に似ていますが、税関手続きに使用される点が特徴です。

とくに越境ECでの関税トラブルを防ぐためにも、正確なコマーシャルインボイスの作成が求められます。貨物の内容や価格に誤りがあると、輸入国で商品が止められたり、追加費用が発生したりする可能性もあるため注意が必要です。

インボイスとの違い

国際取引でインボイスと呼ばれる書類は、実際にはコマーシャルインボイスを指している場合が大半です。

厳密にいえば、インボイスは請求書全般を指す用語であり、コマーシャルインボイスはその中でも商業取引における正式な請求書を意味します。しかし、国際輸送や貿易実務においては、インボイスといえばコマーシャルインボイスを指すことが一般的となっています。

プロフォーマインボイスとの違い

プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)は、輸出前に買主へ提示する見積書のような位置付けの書類です。価格や取引条件が記載されていますが、実際の売買契約が成立していない段階で発行されるため、正式な請求書としては扱われません。

買主側が輸入許可を得るための申請書類として、またはコマーシャルインボイスの発行が遅れる場合の仮書類として利用されるケースがあります。

一方で、コマーシャルインボイスは契約後に発行されるため、価格・数量・支払条件などが確定しており、税関でも正式な書類として取り扱われます。

越境ECや貿易業務では提出先や用途によって使い分ける必要があり、両者を混同しないよう注意が必要です。

パッキングリストとの違い

パッキングリストは、貨物の梱包状態を明確にするための書類で、パッケージごとの商品の数量、重量、梱包した状態でのサイズ、梱包形態などが詳細に記されています。物流業者や輸入者が荷物を確認する際に用いられます。

一方、コマーシャルインボイスには金額や取引条件などの情報が含まれており、関税計算や請求の根拠となる点が大きな違いです。輸出においては、両方の書類を求められるケースがある一方、国や通関方式によってはパッキングリストが不要とされる場合もあります。

いずれの書類も正確に記し、記載情報に整合性を持たせることが重要です。内容に相違があると通関トラブルの原因となるため、用途に応じた書類の適切な管理が求められます。

コマーシャルインボイスの役割

コマーシャルインボイスは、国際取引において多面的な役割を担う重要な書類です。主な役割として、関税計算の基礎資料、商品情報の確認書類、商業取引の証明書類という3つの側面があります。

関税と消費税の計算

コマーシャルインボイスは、輸入国での関税や消費税を正確に算出するための基礎となる書類です。税関は、この書類に記載された商品価格を基準として税額を決定します。

輸入時に課される関税は、商品の種類や原産国によって税率が異なりますが、その計算のベースとなるのがコマーシャルインボイスに記載された商品価値です。

また、多くの国では関税に加えて付加価値税(日本の消費税に相当)も課税されており、これらの税額算出においてもコマーシャルインボイスの情報が使用されます。

関税計算の基礎となるインボイスの内容が不正確であれば、税関での差し戻しや、追加納税などのトラブルにつながる恐れもあるため、記載内容は正確かつ明確に記すことが大切です。

商品情報の確認

コマーシャルインボイスには、商品名や型番、数量、単価などの基本情報が詳細に記載されます。これにより、輸出者・輸入者の双方で商品の内容や条件を正確に共有できるため、発送ミスや認識違いによるトラブルの予防につながります。

特に越境ECのように国や地域に合わせた対応が求められるビジネスでは、情報の行き違いによって生じた齟齬が顧客満足度の低下や返品の原因となることもあるため、正確な情報共有が求められます。

また、税関においても商品情報は分類や評価の基準となるため、簡略化しすぎた表現や不明瞭な記載は避けるべきです。相手国の言語や分類基準を考慮しつつ、誤解のない商品情報を記載することが重要となります。

商業取引の証明

コマーシャルインボイスは、売主と買主の間で成立した商業取引を証明する公式書類としても機能し、契約内容の確認や紛争解決時の重要な証拠書類となります。

取引金額やインコタームズ(貿易条件)などの詳細情報が記載されており、輸出者と輸入者双方が契約内容を正確に把握するために欠かせません。

費用負担の範囲や輸送リスクの分担についても明確に示されているため、後のトラブル防止に大きく寄与します。そのため、誤った記載や確認不足があると費用負担やリスク分担に関する問題が発生する可能性が高まります。

さらに、コマーシャルインボイスは決済時の根拠書類としても重要な役割を持ち、銀行による信用状取引や送金手続きの際に、取引の真正性を証明する書類として使用されます。

コマーシャルインボイスの書き方と記入例

コマーシャルインボイスに決まったフォーマットはありませんが、記載すべき必須項目があります。以下の項目を適切に記載することで、通関手続きをスムーズに進められます。

コマーシャルインボイスの必須記載項目は次のとおりです。

・インボイス番号と作成日
・輸出者の情報(会社名、住所、連絡先)
・輸入者の情報(会社名、住所、連絡先)
・輸送に関する情報(輸送手段、便名、出発地、出発予定日、到着地、経由地)
・支払い条件(決済方法)
・インコタームズ(貿易条件)
・商品明細(品名、数量、単価、合計金額など)
・重量や容積など
HSコード(統計品目番号)
・原産地
・シッピングマーク(荷印)
・作成者の署名

とくに商品明細では、正式な品名や型番、市場価格を明記することが重要です。インボイスが複数ページにわたる場合は、ページ番号や参照コードを記載して見やすく整理する配慮も求められます。下記はコマーシャルインボイスの記入例を示したサンプルです。

コマーシャルインボイスの作成手順

コマーシャルインボイスの作成は、以下の手順で進めると効率的かつ正確に完成させることができます。まずはテンプレートを準備し、段階的に情報を入力していきましょう。

コマーシャルインボイスの作成手順は次のとおりです。

  1. テンプレートの準備:必須項目をすべて含むテンプレートを作成または入手する
  2. 基本情報の入力:インボイス番号、作成日、輸出者・輸入者情報を記載する
  3. 輸送情報の記載:輸送手段、便名、出発地、出発予定日、到着地、経由地を入力する
  4. 取引条件の設定:支払い条件とインコタームズを明記する
  5. 商品明細の作成:品名、数量、単価、合計金額などを正確に記載する
  6. 追加情報の入力:HSコード、原産地、重量、容積、シッピングマークなどを記載する
  7. 最終確認:記載内容をチェックし、計算ミスがないか確認する
  8. 署名・印刷:作成者の署名を入れて印刷し、荷物に添付する

各ステップで内容が正確か丁寧に確認することが、スムーズな通関とトラブル回避につながります。特に商品明細とHSコードは慎重に記載する必要があります。

コマーシャルインボイスを作成する際の注意点

コマーシャルインボイスにおける記載ミスは、輸送トラブルを引き起こす大きな要因となります。特に品名や数量、金額などの基本情報に誤りがあると、税関での確認に時間がかかる上、修正のために再提出や追加費用が必要になるケースもあります。

こうしたトラブルによって輸送全体が遅延し、納期に影響することは珍しくありません。取引先や輸送業者からの信頼を損なうリスクもあるため、情報を記載する際は正確を期すことが重要です。

可能であれば複数人でダブルチェックを行い、記入漏れや数字のミスを防ぎましょう。ちょっとしたミスが大きな損失につながることがあるため、注意深く作成する姿勢が求められます。

コマーシャルインボイスの作成を効率化

コマーシャルインボイスは国際輸送において必須の書類であり、通関手続きや関税計算の基礎となる重要な役割を担っています。しかし、記載項目が多く、手作業での作成はミスが発生しやすいという課題があります。

そこで注目したいのが、Ship&coのような出荷管理システムです。Ship&coでは、国際配送ラベルを作成する際に、コマーシャルインボイスが自動で生成される仕組みになっています。

これにより、コマーシャルインボイス作成時の記載ミスのリスクを大幅に削減でき、より効率的な海外発送業務の実現が可能です。

コマーシャルインボイス作成の負担を軽減し、海外向けビジネスの拡大を検討している場合は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。