物流DXとは?課題や具体的な施策、補助金、成功事例を解説
物流DXとは、デジタル技術で物流のビジネスモデルを変革することです。日本のロジスティクスにおける課題、物流DXのメリットや事例を解説します。
物流業界では、人手不足や配送量の増加、燃料費の高騰など、複数の課題に直面しています。現場の業務量は増える一方で、従来のやり方に限界を感じている事業者も多いでしょう。こうした状況を打開する手段として注目されているのが、デジタル技術を活用し、物流業務の仕組みを変革する物流DXです。
本記事では、物流DXの基本的な考え方から日本の物流業界が抱える課題、具体的な施策事例、導入の手順、活用できる補助金、実際の成功事例までを解説します。
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIやIoTなどのデジタル技術を使って、物流のビジネスモデルや組織の仕組みを根本から再構築する取り組みです。経済産業省は、DXを「データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと」と定義しています。物流DXはその考え方を物流領域に当てはめたものです。
留意すべき点は、機械化や効率化はDXの手段であって、目的ではないということです。省人化や自動化はあくまで通過点であり、最終的には物流そのものを最適化し、事業の強みに変えるのが物流DXのゴールとなります。この点を取り違えると、導入しても成果が出ないまま終わることもありえます。
参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード実践の手引き2.1(要約版)」
物流のデジタル化との違い
物流のデジタル化とは、紙の伝票をデータに置き換えたり、電話連絡をチャットツールで行ったりすることです。既存の業務フローをデジタルに転換するもので、業務の仕組み自体は変わりません。
物流DXはデジタル技術を用いてビジネスモデルを再設計し、これまで生み出せなかった価値を作ることが目的です。「物流=コスト」ではなく「物流=投資」という発想の転換が求められます。
日本の物流業界における課題
物流業界には構造的な問題が複数存在します。DX推進の背景を理解するためにも、詳細を把握しておきましょう。
人手不足
トラック運転者の有効求人倍率は、令和6年度時点で2.37倍です。全職業平均は1.14倍なので、深刻な状況であることがわかります。令和2年度の1.94倍から一貫して上昇しており、改善の兆しは見えていません。
年齢構成にも問題があります。道路貨物運送業では45〜59歳が全体の46.0%を占めており、全産業平均の34.3%を11.7%上回っています。一方、29歳以下の若手は10%程度にとどまっており、世代交代が進んでいない実態があります。大型トラック運転者の平均年齢は令和7年度には51.5歳となっており、今後10〜15年で現役世代の大量退職が見込まれる中、若い担い手をどう確保するかが業界全体の課題です。
参考:厚生労働省 トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみる運転者の仕事
EC市場の拡大による配送量の増加
経済産業省の調査によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26兆1,225億円で、前年比1兆2,790億円増です。BtoB-ECも514兆4,069億円と前年から10.6%拡大しており、EC全体の規模が急速に膨らんでいます。
宅配便の取扱個数は令和5年度で約50.7億個でした。平成22年度が約32.2億個だったので、十数年で1.5倍以上になった計算です。問題は量だけではありません。直近の資料によれば令和6年度の再配達率は約10.2%で、10個に1個は2度運ばれています。再配達率自体は減少傾向にあるものの、注文数が増えているので再配達の回数も増えており、EC市場の成長の影で現場の疲弊も進んでいます。
参考:経済産業省 令和 6 年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
参考:国土交通省 宅配便の再配達削減に向けて
過酷な労働環境
2024年の大型トラック運転手の年間労働時間は約2,484時間です。全産業平均より432時間長くなっています。それでも年間賃金は492万円で、全産業平均を35万円下回ります。中・小型になるとさらに低く、437万円です。長時間労働・低賃金の現状が、若手の参入を阻んでいます。
2024年4月に施行された時間外労働の上限規制(年間960時間)は、こうした環境を是正するための措置です。ただし労働時間が制限されれば1人あたりの稼働量が減り、輸送能力の低下につながるという側面もあります。この「2024年問題」を切り抜けるためには、待遇改善と人員確保を同時に進める必要があるでしょう。
参考:国土交通省 物物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題
ガソリン価格の上昇
燃料費の高騰は、物流事業者の収益を直撃しています。レギュラーガソリンの小売価格は2016年を底に上昇が続き、2025年にはここ10年で最も高い水準に達しました。2026年に入ってからも国際的な紛争の影響で一時190円台になり、6月時点では落ち着いているものの、先行きは読めない状態が続いています。
トラックは乗用車よりも燃費が悪く走行距離も長いので、価格が少し上がるだけで年間の燃料費は大きく変わります。しかも荷主への価格転嫁が難しい商慣習が根強く残っており、上がったコストを自社で吸収せざるを得ない事業者が後を絶ちません。燃料費は変動リスクではなく、構造的な経営課題といえるでしょう。
参考:新電力ネット ガソリン価格
参考:BSRWeb ガソリン価格は今後どうなる?2026年3月の再値上げ要因と見通し
環境問題
貨物自動車が運輸部門全体のCO2排出量に占める割合は37.8%で、日本全体で見ると約7.3%に相当します。国土交通省のこのデータは、物流業界が環境負荷軽減のための取り組みを避けて通れないことを意味しています。
航空や船舶に比べ、トラックは単位輸送量あたりのCO2排出量が多い輸送手段です。再配達や積載率の低い運行が重なれば、排出量はさらに増加します。EVや燃料電池車への切り替えは少しずつ進んでいますが、車両価格とインフラ整備のコストが高額のため、中小規模の事業者には踏み出しにくいという現実があります。技術面の改善だけでなく、配送ルートの見直しや共同配送など、運用面のアプローチも必要です。
ITテクノロジーへの対応不足
帝国データバンクの調査では、運送業界のDX実践率は14%となっています。情報処理推進機構の調査でも運輸業のDX取り組み率は20%未満で、他産業と比べて出遅れが目立つ結果となりました。
紙の伝票や電話での連絡に加え、担当者のノウハウに頼る状況が、いまだに多くの現場で続いています。システムが古く特定の社員しか操作できない場合は、その人の離職によって業務が止まる事態にも陥りかねません。人手不足が深刻になればなるほど、デジタル化の遅れが経営リスクに直結する度合いも増していくのです。
参考:帝国データバンク DX推進に関する企業の意識調査
参考:情報処理推進機構 DX白書2023
物流DXの具体的な施策事例

物流DXの取り組み方は業務領域によって異なります。領域ごとに施策例を整理したので、自社の課題と照らし合わせてみてください。
バックオフィス業務のデジタル化
受発注や請求書処理、送り状の発行などの事務作業は、デジタル化による効果が表れやすい領域です。
主な施策例
- 受発注管理システムの導入による電話・FAX対応の削減
- 請求書・納品書の電子化によるペーパーレス化
- AI-OCR(手書きや印刷文字をデータに変換する技術)を使った手入力の自動化
- 勤怠・シフト管理のシステム化
- 送り状発行システムの導入による発行ミスと作業時間の削減
送り状発行は、配送会社ごとにフォーマットが異なるため、手作業で処理しているとミスと時間のロスが発生しがちです。Ship&coを利用すれば、複数の配送会社の送り状を一画面で一括発行でき、ECサイトの注文データとも自動連携できます。導入も簡単で、手入力の手間を省くのに役立つツールです。
配送プロセスの最適化
ベテランドライバーの配車ノウハウをシステムに移すと、現場の属人化リスクは大きく下がります。配送プロセスのデジタル化は、効率化と同時にリスク管理の意味合いも持っています。
主な施策例
- TMS(輸配送管理システム)による出荷から到着までの一元管理
- AIを活用した配車システムによる最適ルートの自動生成
- GPSを使った車両のリアルタイム追跡と運行状況の把握
- 運行指示書のデジタル化によるペーパーレス化
- AGV(無人搬送車)を活用した搬送・荷役作業の自動化
配送ルートの最適化を行うと、指定時間帯に届けられる確率が高まるため、コスト削減だけでなく再配達の減少にも効果があります。燃料費が高止まりしている今、取り組む優先度は高いといえるでしょう。
商品・在庫・倉庫管理の自動化
倉庫は、手作業が多い場所です。ピッキング、仕分け、在庫確認は人手に頼ってきた作業ですが、システムやロボットに置き換えられる余地が大きい領域でもあります。
主な施策例
- WMS(倉庫管理システム)の導入による入庫・ピッキング・出庫の一元管理と在庫精度の向上
- バース予約システムの導入によるトラックの荷待ち時間の削減と人員配置の最適化
- GTP(自動棚搬送ロボット)の活用によるピッキング作業の負担軽減
- 自動仕分け機の導入による大量貨物の迅速・正確な処理
- RFIDタグ(電波で情報を読み取る技術)を使ったリアルタイム在庫把握
人が集まりにくい現場こそ、自動化の優先度は高くなります。導入コストはかかりますが、長期的な視点で採用・教育にかかるコストと比較し、投資として見合うか判断してください。
サプライチェーンの可視化
調達・製造・在庫・配送・販売の一連の流れをサプライチェーンと呼びます。各工程を別々の企業が担っているため、全体像が見えにくいという問題があります。そのため、遅延や在庫の過不足が起きても把握が難しく、タイムラグが現場の混乱を招きがちでした。
主な施策例
- ブロックチェーン技術(複数拠点で取引履歴を分散管理する仕組み)を活用した企業間のリアルタイム情報共有
- クラウド型SCMシステム(サプライチェーン全体を管理するシステム)の導入による在庫・納期・輸送状況の一元把握
- IoTセンサーを使った輸送中の温度・位置・状態のリアルタイム監視
- 在庫データと販売データの連携による欠品・過剰在庫の予兆検知
- 輸送データの分析による配送リードタイムの短縮と需要予測の精度向上
各工程の情報がつながると、問題の発見が早くなります。物流データは使い方次第で経営判断の材料にもなり、単なる業務効率化を超えた価値を生み出す可能性があります。
物流DXを実施するメリット
物流DXの導入は、コスト・人手・品質など、事業の根幹に関わる課題の解決につながります。それぞれのメリットを見ていきます。
生産性の向上でコスト削減と人手不足の解消
自動仕分け機やロボットを倉庫に導入すると、複数人でこなしていた作業を1人で切り回せるようになるケースがあります。人件費が下がるだけでなく、浮いた人員をよりヒューマンパワーが求められる業務に充てられるのもメリットです。
AIで配送ルートを最適化すれば走行距離が減って、同じ時間でこなせる件数が増えるため、燃料費の削減にも効果があります。在庫管理の精度が上がれば、抱えすぎた在庫の保管コストや廃棄ロスも削れるでしょう。
人が足りないという声は多くの現場で上がっていますが、採用を増やす以前に「今いる人員で何ができるか」を問い直す余地が残っているかもしれません。
サービスの品質改善による顧客満足度の向上
荷物の現在地に関する問い合わせに即答できるだけで、顧客の受ける印象は大きく変わるものです。IoTセンサーやGPSを使ったリアルタイム追跡を導入すると、配送状況をその場で確認して伝えられるようになります。
また、倉庫内のピッキングミスや出荷遅延が減れば、クレームの対処に割く時間も減ります。トラブルが起きてから対処するのではなく、起きにくい仕組みを作ることが長期的な顧客との関係に寄与するのです。大口取引先には到着予測の精度向上、個人向けには追跡サービスの利便性向上などを図れば、顧客層に応じた品質改善につながります。
業務の効率化による従業員満足度の向上
デジタルツールの活用は、現場スタッフの労働負荷を軽減し、職場への定着率を高める重要な要素となります。煩雑なアナログ作業や長時間に及ぶ事務処理は、従業員の疲弊を招く大きな原因となってきました。
デジタル化して情報のやり取りをスムーズにすれば、長時間労働が減り、精神的なゆとりが生まれて業務への意欲も向上するでしょう。まずは、現場の不満に耳を傾け、どの工程を電子化すべきか検討してください。働きやすい環境の構築は、企業の持続的な成長に直結します。
人的ミスの防止
目視チェックや手書き管理には、どうしても限界があります。どれだけ注意しても、ミスをゼロにはできません。
人的ミスを解決するには、システムによる自動化が有効です。たとえば、バーコードスキャンができるハンディターミナルを現場に導入すると、読み取るだけで瞬時に正確なデータが共有され、人の目による曖昧な確認は不要になります。物流の品質を担保するだけでなく、「間違えてはいけない」という現場スタッフの心理的プレッシャーを減らす効果も期待できます。
持続可能な社会への貢献
物流の効率化を推進する姿勢は、地球環境への配慮という企業の社会的責任を果たすことにもつながります。配送ルートを最適化して走行距離を短くすれば、燃料消費量を抑え、温室効果ガスの排出を削減することが可能です。これは昨今重視されているESG(環境・社会・ガバナンス)経営の実践といえます。
過剰な再配達を減らす取り組みも、資源の無駄遣いを防ぐ上で有効な手段です。まずは自社の排出量を可視化し、具体的な削減目標を社内外に告知することから着手しましょう。DXは、社会から選ばれる企業であり続けるための後ろ盾となります。
物流DXを実施する際の注意点
物流DXは多くの成果をもたらしますが、導入にあたってはいくつかの注意点が存在します。事前に想定される壁を把握し、対策を講じておくことがプロジェクトを円滑に進める鍵となるでしょう。
導入コストが発生する
システムの刷新やロボットの導入には、まとまった初期費用がかかります。特に自動倉庫の構築や高度な配車システムの整備には、数千万円から数億円規模の投資が必要になるケースも珍しくありません。
また、導入後も月々の利用料やメンテナンス費用といったランニングコストが継続的に発生します。まずは投資額に対してどの程度の収益改善が見込めるか、ROI(投資収益率:投資額に対して得られる利益の割合)を試算してください。負担を軽減するために、補助金や助成金の活用も検討しましょう。
ITリテラシー教育が必要になる
新しいシステムを導入しても、使いこなせる人材がいなければ意味をなしません。操作方法を教えるだけの研修では、システムが使われないまま放置されるリスクがあります。なぜデジタル化が必要なのか、目的や利点を現場が実感を持って理解できるような説明が必要です。
年齢層や部署によって、ITの理解度は大きく異なります。一律の研修内容には限界があるので、習熟度別にマニュアルや研修プログラムを分け、操作に不安を抱える従業員へのフォロー体制も用意してください。導入直後だけでなく、運用が定着するまで支援を続ける姿勢がないと、システムは無用の長物と化してしまいます。
セキュリティ対策に気を付ける
DXを推進するにあたり、セキュリティ対策を軽視すれば、企業の存続そのものが揺らぎかねません。顧客データや配送ルートといった機密情報が一度流出すれば、社会的信用は失われ、事業継続にも深刻な影響が及ぶでしょう。システム障害によって物流が完全に止まる事態も想定し、データの二重化やバックアップ体制の強化を行うことが不可欠です。アクセス権限は必要最小限に絞り、セキュリティソフトは常に最新の状態を保つよう徹底してください。
社内のITルールを厳格に定めれば、現場も安心して運用に取り組めます。技術面の防御だけでなく、従業員一人ひとりの意識を変えていく取り組みも欠かせません。
物流DXを実施する手順

物流DXを実施する際の手順を、段階的に解説します。
1. 現在の状況を分析して課題の特定
業務フロー全体を棚卸しすることが、物流DXの最初の一歩です。配送や受発注、在庫管理の各工程をリストアップし、無駄や非効率がどこに潜んでいるかを見極めてください。
部門間でデータが分断され、情報の流れが途切れているケースもあります。現場の声を丁寧に拾い、理想と現実のギャップを洗い出していきましょう。
2. 目標を設定
課題を把握したら、次は具体的な数値目標を設定します。「作業を楽にする」といった曖昧な目標では、DXの成果は測れません。「配送コストを10%削減する」のような、数字で示せる具体的なゴールを設けましょう。この数値目標を客観的に評価する軸となるのが、KPI(重要業績評価指標:目標達成度を測るための定量的な指標)です。リードタイム(注文から納品までに要する時間)の短縮や在庫回転率の向上など、現場の実務に直結する指標を選ぶことが望ましいといえます。
判断基準を数値化しておけば、プロジェクトが途中で方向性を失うリスクも抑えられるでしょう。確かな指標があれば、効果検証もスムーズに進みます。
3. 適切なソリューションの選定
機能が豊富なツールを導入しても、既存のシステムと噛み合わないと真価を発揮できません。API連携の可否を確認せずに契約すると、データがあちこちに分散したままになり、結局手作業での転記が必要になることがあります。
将来的に拠点が増えたときや配送量が跳ね上がったときに、そのシステムが耐えられるかどうかも視野に入れて適切なソリューションを選んでください。導入時点では問題なくても、2〜3年後に限界が来る可能性もあります。カタログスペックでなく、自社の業務フローとの相性を優先して選ぶのが重要です。
4. 小規模テストの実施
物流DXは、特定の拠点や業務に絞ったPoC(本格導入前に小さい規模で実現可能性を検証する取り組み)から始めると、リスクを最小限に抑えられます。現場スタッフが操作に窮する箇所がある、処理速度が実務に追いつかないなど、実際に運用してみないと分からない問題は必ず出ると考えておくべきです。「うまくいくはず」という前提で全社一斉導入すると、問題に対処できなかったときに業務に支障をきたすことになります。
スモールスタートは、組織の受け入れ態勢という観点からも利点があります。いきなり大きな変更をするより、まずは実績を積み上げてから段階的に導入するほうが、現場にも受け入れられやすいでしょう。
5. 効果検証
テスト期間中に集めたデータを検証し、導入前に設定したKPIと照らし合わせます。実際の数字が期待を下回っていた場合、原因を曖昧にしたまま次へ進んでは改善は見込めません。システム側の設定なのか、現場の使い方なのか、全社展開に踏み切る前に原因を特定しましょう。
現場スタッフへの聞き取りも並行して行い、数字に出てこない使いづらさや運用上の摩擦を直接聞き出します。データと現場からのフィードバックを基に効果検証をしてから、全社展開へ進むかを判断してください。
6. 全社展開
テストで確認できたことを土台に、展開範囲を広げていきます。ロールアウト(拠点や部門を順番に増やしていく段階的な展開手法)を基本にして、最初のテスト拠点で起きた問題と解決策を次の展開先と共有すると、同じつまずきを繰り返さずに済むでしょう。また、展開初期には本部側のサポートを集中的に行うと効果的です。
7. 効果測定と改善
稼働後のデータは定期的に確認しましょう。システムに残るログ(操作・処理の記録)を分析すると、導入直後には見えなかった非効率な部分が浮かび上がってくることがあります。
業務環境は常に変わり続けるので、設定したKPIが現場の実態と合わなくなることは少なくありません。指標を固定したまま運用し続けると、測っている数字と現場の感覚がずれていくので、改善サイクルを止めないために定期的に見直す仕組みを最初から組み込んでおきましょう。
物流DXで活用できる補助金
物流DXの導入コストを抑える手段として、補助金の活用は検討する価値があります。要件や公募時期はそれぞれ異なるので、最新情報は各事業の公式サイトで確認してください。
中小企業省力化投資補助金(一般型)
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業が、IoTやロボットなどのデジタル設備を導入する際に活用できる補助金です。汎用製品をカタログから選ぶカタログ注文型と異なり、現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築を幅広く支援している点が特徴といえます。
補助上限額は従業員数によって異なり、5人以下で750万円、最大101人以上で8,000万円となっています。大幅な賃上げを実施する場合は上限額がさらに引き上げられる仕組みで、賃上げと省力化の同時進行を図る際に有用な制度です。補助率は基本的に中小企業で1/2、小規模事業者は2/3となっています。
ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて申請できるので、倉庫の自動化システムと管理ソフトをセットで導入したいというようなケースにも使えます。公募制のため、申請のタイミングを逃さないよう公募スケジュールを事前に確認しておきましょう。
デジタル化・AI導入補助金
中小企業・小規模事業者のITツール導入コストを補助するのが、デジタル化・AI導入補助金制度です。在庫管理システムや決済ソフトなど、業務効率化に使えるソフトウェアが幅広く対象になっています。公式サイトに事前登録されたツールが対象のため、まず導入を検討しているツールが登録済みかどうか確認が必要です。
申請する際は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と組んで手続きを進める仕組みになっています。申請枠は複数あります。
- 通常枠:在庫管理システムや業務ソフトなど、事業のデジタル化全般を支援
- インボイス枠(インボイス対応類型):インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト等の導入を支援
- インボイス枠(電子取引類型):受発注システムを商流単位で導入する企業向け
- セキュリティ対策推進枠:サイバー攻撃リスクへの対策費用を支援
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠:複数の中小企業が連携して地域DXや生産性向上に取り組む場合に利用可
物流DXでは通常枠が中心になりますが、受発注のデジタル化を進めたい場合はインボイス枠との併用も視野に入れることができます。
物流施設におけるDX推進実証事業
DX推進実証事業は、倉庫や物流センターの自動化・デジタル化を推進する補助事業です。荷待ち時間の削減や施設の省人化を目的とした取り組みが対象で、国土交通省が所管しています。申請にはシステム構築・連携と自動化・機械化機器の導入を同時に行う必要があり、一方だけでは受け付けてもらえません。
補助率は1/2以下、上限額はシステム構築・連携で2,000万円、自動化・機器導入で3,000万円です。最低賃金を3%以上または45円以上引き上げる場合、上限がそれぞれ2,200万円・3,300万円に上がります。
倉庫業者、貨物運送事業者、物流不動産開発事業者など、対象事業者の範囲は広く設定されています。詳細は事務局の特設サイトで公開されている公募要領で確認してください。
物流効率化推進事業
物流効率化推進事業は、CO2削減と物流の省力化を目的とした補助事業です。特徴的なのは、荷主と物流事業者など複数の関係者で構成される「協議会」が申請主体ということで、単独企業での申請は認められていません。対象事業は複数あります。
- 総合効率化計画策定事業:物流効率化法に基づく計画策定のための調査を支援
- モーダルシフト推進事業:トラックから鉄道・船舶への輸送転換を支援
- 幹線輸送集約化推進事業:幹線輸送の積載効率向上を支援
- ラストワンマイル配送効率化事業:消費者への最終配送の効率化を支援
- 中継輸送推進事業:長距離輸送を中継地点で分担する仕組みの構築を支援
補助上限は計画策定事業が500万円、それ以外は1,000万円です。省人化・自動化機器の導入が伴う場合、補助率は最大2/3まで上がります。申請は地方運輸局等の窓口で受け付けています。
株式会社オープンロジの物流DX成功事例
株式会社オープンロジは、全国の倉庫をネットワーク化した物流フルフィルメントプラットフォーム「オープンロジ」を提供している企業です。固定費ゼロ・従量課金で利用できるのが特徴で、導入アカウント数は約11,500(2022年9月時点)に達しています。
オープンロジが直面していた課題は、複数の配送会社との連携開発にかかる時間とコストでした。配送会社ごとにAPI仕様が異なり、仕様の確認や綿密なテストなどの工数が想定以上に膨らんで、サービス拡大のスピードに開発側が追いつけない状況だったのです。
この課題を解決したのがShip&coの出荷APIです。導入の決め手になったのは、複数の配送会社のAPIが1つに統合されており、エンジニアが慣れ親しんだ仕様で実装できる点でした。これにより、佐川急便やDHL Expressなど国内外の配送会社別にシステム開発をする手間が省け、大幅な効率化を実現しています。実装コストの削減とテスト工数の短縮を同時に達成した事例は、物流DXにおけるAPI活用の可能性を示しています。
関連記事:オープンロジ:Ship&co APIの活用で物流システム開発時間の短縮を実現
まとめ
物流DXとは、デジタル技術を使って物流のビジネスモデルや業務の仕組みそのものを変革する取り組みです。人手不足やEC市場の拡大、労働環境の悪化など、複数の課題に直面する現在、現状維持のままでは立ち行かなくなる現場が増えています。
導入にあたっては、現状分析と目標設定を起点に、小規模テストを経て全社展開へと段階的に進めることが重要です。補助金も複数用意されており、コスト負担を抑えながら着手できる環境は整っています。
物流DXを進める上で、出荷業務の効率化は優先度の高い領域のひとつです。Ship&coは複数の配送会社の送り状を一画面で一括発行できる配送管理ツールです。ECサイトの注文データと自動連携して手入力の手間とミスを削減し、出荷業務の無駄を省きます。物流DXの第一歩として、導入を検討してみてください。