日本からアメリカへの関税はいくらから?関税率の調べ方も解説

日本からアメリカへの商品発送時、関税がいくらから発生するのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。特に2025年8月にデミニミスによる免税制度が終了し、低価格の商品でも課税対象となったため、越境ECにも影響が出ています。

この記事では、アメリカの関税制度の仕組みや関税率の種類、関税の計算方法や影響する要素を詳しく解説します。関税率の調べ方や軽減制度、HTSコードについても説明していきます。

アメリカの関税の仕組み

アメリカの関税制度は、1930年に制定された関税法を基盤とし、1993年の税関近代化法によって電子化が進められてきました。現在では、輸入申告や税率の確認がオンラインで行えるようになっています。

関税には主に2つのタイプがあります。ひとつは商品の価格に応じて課される「従価税」、もうひとつは数量や重量を基準に計算される「従量税」です。アメリカでは、これらの税率を決定する際にHTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)が用いられます。

HTSUSは米国国際貿易委員会(USITC)が管理しており、すべての輸入品に対して分類コードが割り当てられる仕組みです。商品のコードに基づいて、適用される税率が決まります。

越境ECの関税対応では、この分類が正確であることが非常に重要で、誤りがあると通関トラブルや追加課税の原因となるため注意が必要です。

アメリカの関税率の種類

アメリカの関税率は、輸入品の条件や相手国との関係性によって複数の区分に分かれています。ここでは、代表的な4つの税率について解説します。

一般税率

一般税率は、アメリカが通常の貿易関係を持つ国々に対して適用する標準的な関税率です。最恵国待遇(MFN)を受けている国々に対して設定され、日本もこの枠に含まれています。

HTSコードに基づいて分類された商品ごとに税率が設定されており、特別な協定がない限り、この一般税率が適用されます。ただし、日米貿易協定の対象品目には、別途特別税率が適用されます。

越境ECでアメリカに商品を送る際は、この一般税率が基準となるため、正確な分類と税率の確認が欠かせません。

特別税率

特別税率は、アメリカが特定の国や地域との間で締結した貿易協定や特恵制度に基づいて設定される優遇税率です。例えば、FTA(自由貿易協定)やGSP(一般特恵関税制度)などが該当し、対象国からの輸入品に対して関税が軽減または免除されることがあります。

日本とアメリカの間には日米貿易協定が締結されており、農産物や工業製品など一部の品目には特別な関税率が適用されます。対象となる商品を正しく把握し、協定で定められた条件を満たすことで、関税を抑えられる可能性があります。

法定税率

法定税率は、アメリカが通常の貿易関係を持たない国に対して適用する特別な関税率です。2025年9月現在ではキューバと北朝鮮、ロシア、ベラルーシの4カ国のみが対象となっています。

法定税率は一般税率よりも高く設定される傾向があり、制裁的な意味合いも含まれています。もともとは共産圏諸国向けに設定された制度で、過去には対象国が多く存在しましたが、国際関係の変化により減少してきました。

一般的なEC事業者が利用する機会は少ないものの、制裁措置や外交政策と深く関わるため、リスク管理の一部として把握しておきましょう。

IEEPA相互関税

IEEPA相互関税とは、アメリカが国家安全保障や外交上の懸念を理由に、特定の国に対して追加関税を課す制度です。これはIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づいて発動され、通常の関税とは別枠で適用されます。

2025年8月7日以降、日本からアメリカへ輸出される製品には、IEEPAに基づく相互関税率15%が適用されています(2025年9月時点)。これは2025年4月5日に課されたベースライン関税10%から引き上げられたもので、日本原産品に対する追加関税として運用されています。

政治的背景によって突発的に変更される可能性もあるため、価格戦略や納期管理に影響を及ぼすリスク要因として、最新情報の把握が不可欠です。

日本からアメリカへの出荷に対する関税はいくらから?

以前はアメリカに800米ドル以下の商品を送る場合、デミニミス制度により関税が免除され、通関手続きも簡素化されていました。しかし2025年8月29日以降、この制度は廃止され、申告価格にかかわらずすべての輸入品が課税対象となっています。これにより、日本からの少額出荷でも関税・消費税が発生し、通関手続きも厳格化されました。

特にDDU(関税抜き持込渡し)では、受取人が税金や通関手続きを負担するため、支払い拒否や配送遅延などのトラブルにつながる可能性があります。こうした制度変更を受け、Ship&coではDDP(関税込み持込渡し)への対応も整えています。DDP対応についての最新情報はこちらをご確認ください。

アメリカの関税の計算方法

アメリカの関税は、輸入品の価格や数量に応じて課されます。基本的にはFOB価格(アメリカへの輸出時点の価格)を基準に、HTSUSに記載された税率を基に輸入者が自己申告で納税します。品目によっては価格ベースの「従価税」、数量ベースの「従量税」、またはその両方が適用されることがあります。

取引がドル以外の通貨で行われた場合は、公定換算レートを使用して税額を算出します。さらに、アンチダンピング関税や相殺関税など、貿易救済措置に基づく追加課税が発生するケースもあり、税関からの確定通知に従って差額調整(関税清算)を行うこともあります。

アメリカの関税率に影響する要素

アメリカの関税率は、単に商品の価格だけで決まるわけではありません。品目分類や原産地、貿易協定の有無など、複数の要素が税率に影響を与えます。

HSコード/HTSコード

関税率を決める大前提となるのが、輸入品を分類する「HSコード」と「HTSコード」です。HSコードは国際的な品目分類の基準で、最初の6桁が世界共通です。アメリカではこれに4桁を加えたHTSコード(計10桁)を使用し、より細かく分類しています。

例えば、ノートパソコンはHSコード「8471.30」、HTSコード「8471.30.01.00」が該当し、関税率は「Free(0%)」です(2025年9月時点)。分類が誤っていると、不要な関税が発生するだけでなく、通関遅延や輸入拒否の原因にもなるため、正確なコード選定が欠かせません。

原産地

商品の原産地も関税率に大きく影響します。アメリカでは、原産国によって適用される税率が異なり、特定の国からの輸入品には優遇措置が設けられています。

例えば、USMCA(旧NAFTA)に加盟するカナダやメキシコからの製品は、原産地証明書の提出などの条件を満たせば関税が免除されることがあります。逆に、原産地が制裁対象国だと、追加関税が課される可能性もあります。

関税負担を軽減するために、商品の製造地や加工地を正確に把握し、必要な書類を整えることが重要です。

貿易協定

アメリカは複数の国と自由貿易協定(FTA)を締結しており、これらの協定が関税率に直接影響します。協定対象国からの輸入品には、関税の引き下げや免除が行われるケースが多く見られます。

一方で、政治的な背景により制裁関税が課されることもあり、追加関税が適用される品目もあります。こうした変動要因を踏まえ、国際市場戦略を柔軟に調整することも重要です。そのためにも、最新の協定内容や対象品目は、政府機関の公式情報で定期的に確認する必要があります。

アメリカの関税率の調べ方

アメリカの関税率は、輸入する商品や原産地によって大きく異なります。正確な情報を得るためには、公式の関税率表や信頼できるデータベースを活用することが重要です。ここでは、アメリカの関税率の代表的な調べ方を紹介します。

HTSUS公式サイト

HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)は、アメリカの輸入品に適用される関税率を品目ごとにまとめた公式関税率表です。米国国際貿易委員会(USITC)が管理しており、最新の税率情報をオンラインで確認できます。

HSコードを入力すると、該当するHTSコードと税率、特別税率などが表示されます。誰でも無料で閲覧可能なので、インボイス作成や通関準備に役立てると良いでしょう。

リンクはこちら:https://hts.usitc.gov/

World Tariff

World TariffはFedEx社が提供する関税データベースで、世界178カ国の関税率や関連情報が網羅されています。HS番号を入力すると、原産国別の税率や特恵関税の有無が表示されるので便利です。

通常は有料サービスですが、JETRO経由で登録すれば、日本居住者は無料で利用できます。登録する際はJETROの専用ページから手続きする必要があり、別の画面から登録すると課金対象になるため注意しましょう。

登録方法はこちら:https://www.jetro.go.jp/theme/export/tariff/

RULES OF ORIGIN FACILITATOR

RULES OF ORIGIN FACILITATORは、WTO・ITCなどが共同開発した関税調査支援ツールです。190以上の国・地域で適用される400超の貿易協定情報が収録されており、原産地規則や関税率を検索できます。

中小企業が使うことを前提に設計されており、複雑な協定条件の確認や関税削減の可能性を探る際に役立ちます。

リンクはこちら:https://www.jetro.go.jp/theme/export/tariff/

CBP公式サイト

CBP(米国税関・国境警備局)の公式サイトでは、関税率の確認に加え、輸入規則や通関条件、貿易協定の適用状況など幅広い情報が公開されています。特にFTAの利用についてや、特殊な輸入に該当するかなどの情報は詳細に記載されており、アメリカ向けの越境ECを行う事業者にとっては欠かせない情報源です。

輸入品の分類や申告方法、必要書類なども確認でき、関税制度の変更にも迅速に対応しているため、最新情報の取得にも適しています。

リンクはこちら:https://www.cbp.gov/

専門家に相談

関税率は、品目分類や原産地、適用される貿易協定など、複数の条件の影響を受けます。そのため、正確な税率を把握するには専門的な知識と事前の確認が欠かせません。

特に輸入規模が大きい場合や、規制対象となる品目(医薬品・食品・化学品など)を取り扱う際は、プロによる最新情報に基づいたアドバイスを受けることで、関税コストの削減やトラブル回避につながります。不安がある場合は、早めに相談しましょう。

アメリカの関税を軽減する仕組み

アメリカでは、一定の条件を満たすことで関税の削減や免除を受けられる制度が整備されています。ここでは代表的なFTAとFTZの仕組みを紹介します。

FTA(自由貿易協定)

FTA(Free Trade Agreement)は、国同士が貿易を促進するために結ぶ協定で、関税の撤廃や削減が盛り込まれています。アメリカは複数の国とFTAを締結しており、日本の場合は「日米貿易協定」により一部の工業製品や農産物が免税となります。また「USMCA」ではカナダ・メキシコとの貿易で関税削減、「韓米FTA」では自動車や電子機器が関税の優遇対象となります。

これらの特典を利用するには、輸入品が協定対象国で生産されたことを証明する「原産地証明書」が必要です。正しく条件を満たせば、関税を大きく下げられます。

FTZ(外国貿易地域)

アメリカにもあるFTZ(Foreign-Trade Zone)は、さまざまな国に設置された特別区域で、関税支払いの延期や免除などの優遇措置が受けられます。FTZに貨物を搬入して再輸出する場合は関税を支払う必要がなく、無期限で保管も可能です。

また、FTZ内で加工を行ってから輸入すると、完成品の税率が適用され、場合によっては関税が低くなることもあります。さらに関税の支払いを延期できるため、企業の資金繰り改善にもつながります。FTZは、アメリカ市場での価格競争力を高めたい企業にとって、関税の削減やキャッシュフロー改善に役立つ仕組みといえます。

まとめ

2025年8月のデミニミス制度廃止により、アメリカ向け荷物は800米ドル以下でも関税が課されるようになり、国際取引に影響が出ています。関税率は品目分類や原産地、貿易協定の有無によって変動するため、正確な情報収集が求められます。

Ship&coでは、DDP(関税込み持込渡し)のオプションを用意しています。複数キャリアの送り状・インボイスの一括管理に加え、アメリカ向け出荷のコスト管理と顧客満足度向上を両立できるツールとして活用を検討してみてください。