荷物の発送が業務の一部となっているEC事業者にとって、配送サービス選びは重要な課題です。多くの配送業者が存在する中、どのサービスを利用すればよいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、ヤマト運輸の宅急便について、料金体系やサイズ制限などを詳しく知りたいと考える方のために、基本情報から料金割引制度、発送手順までのポイントを解説します。他社サービスとの比較や宅急便以外のヤマト運輸のサービスについても紹介します。
宅急便とは
宅急便とは、ヤマト運輸が展開する小口荷物向けの配送サービスです。配送会社の中でも高い知名度を誇り、全国へ迅速かつ確実に荷物を届けられる点が信頼を集めています。基本的に年中無休で、スピードと柔軟性を兼ね備えたサービスとして、多くのユーザーに利用されています。
着払い、日時指定、再配達など、オプションサービスも充実しているため、個人の利用はもちろん、EC事業者の発送業務の利用にも適しています。配送効率や顧客満足度の向上を目指す上で、頼れる存在といえるでしょう。
宅配便との違い
「宅配便」は、荷物を配送先まで届けるサービス全体を示す一般名称であり、日本郵便のゆうパックや佐川急便の飛脚宅配便などもこれに該当します。
対して「宅急便」は、ヤマト運輸独自のブランド名として商標登録されており、他の配送会社は使用できない名称です。つまり、宅配便という大きなカテゴリーの中に、ヤマト運輸の宅急便、日本郵便のゆうパック、佐川急便の飛脚宅配便などが含まれる構造です。
宅急便のサイズ・重量・料金

ヤマト運輸の宅急便は、荷物のサイズ(3辺の合計)と重量の両方を基準に料金を決定し、どちらか高いほうが適用されます。つまり、軽量でもサイズが大きい荷物や、小さくても重い荷物は上位サイズの料金が適用される仕組みです。
最小は60サイズ(3辺合計60cm以内)、最大は200サイズ(3辺合計200cm以内)で、重量は最大30kgまで送付可能です。配送エリアによって料金は異なり、東京都内間の料金は下記の表のようになっています。
ビジネス利用の場合は、法人(掛売り)契約を締結すると契約状況や利用頻度に応じて特別料金が適用される場合があります。詳細についてはヤマト運輸にご確認ください。
参考:宅急便運賃一覧表:全国一覧|ヤマト運輸
参考:法人(掛売り)契約をご検討中のお客さま【法人向け】|ヤマト運輸
宅急便で送れないもの
ヤマト運輸の宅急便では、安全や法令遵守の観点から送れないものが定められています。以下のような荷物は取り扱い対象外のため、送ることはできません。
・現金・有価証券(株券、手形など)
・各種カード類(クレジットカード、キャッシュカードなど)
・パスポートや車検証など再発行が困難な書類
・原稿・フィルム・音声テープなどの原本類
・ペット類(犬・猫・小鳥など)
・毒物・劇物を含むもの(バッテリー含む)
・遺骨・仏壇・位牌
・銃刀類
・花火・灯油・ガス缶など危険物
・一梱包で30万円(税込)を超えるもの
・不潔な物品など、他の荷物に損害を与える恐れのあるもの
・信書、その他法令の規定や公序良俗に反するもの
・規格(200サイズ)を超える荷物
航空搭載できないもの
宅急便の一部は飛行機で運ばれますが、安全上の理由から航空機に積めない危険物が定められています。以下のようなものは航空輸送が禁止されています。
・火薬類(花火・クラッカー・発煙筒など)
・高圧ガス(キャンプ用ガス・カセットボンベなど)
・引火性液体(香水・ヘアスプレー・オイルライターなど)
・可燃性物質(マッチ・木炭など)
・酸化性物質(漂白剤・小型酸素発生器など)
・毒物類(農薬・殺虫剤など)
・放射性物質(特定の医療機器内の成分など)
・腐食性物質(液体バッテリー・水銀など)
・その他の有害物質(磁石・石油ストーブ・マニキュアなど)
これらはすべて陸・海上輸送扱いとなります。
また、危険物ではないものの、航空搭載には条件がある荷物もあります。以下の品目は、適切な梱包や申請を行うことで航空輸送が可能です。
・ドライアイス(品名欄に重量を記載)
・リチウムイオン電池を内蔵した機器(パソコン・スマホ・ゲーム機など)
・GPSや電波を発する機器(携帯電話・無線機など)※電源を切った状態であること
宅急便の料金割引
ヤマト運輸では、配送料金を抑えるためのさまざまな割引制度が用意されています。営業所への持ち込みや会員登録、アプリでの決済を活用することで、運送コストを抑えることが可能です。
持込割
「持込割」は、ヤマト運輸の営業所や取扱店、コンビニなどへ直接荷物を持ち込むと送料が割引される制度です。一般の利用者は1個につき100円引きとなり、クロネコメンバーズ会員であれば、営業所に持ち込むと150円の値引きが受けられます。
クロネコメンバー割
クロネコメンバー割は、ヤマト運輸の会員サービス「クロネコメンバーズ」に登録すると利用できる割引制度です。専用の電子マネーを事前にチャージし、宅急便の送料を支払うと、送料が割引されます。
10%引きの「クロネコメンバー割」と、15%引きの「クロネコメンバー割BIG」が用意されており、いずれもヤマト運輸独自のプリペイド方式です。チャージは営業所や専用アプリから簡単に行え、端末にタッチするだけで支払いが完了します。
頻繁に発送する方やネットショップ運営者などには、手軽に送料を節約できるお得なサービスです。
にゃんPay
「にゃんPay」は、ヤマト運輸が提供するクロネコメンバーズ向けのキャッシュレス決済サービスです。スマートフォンの公式アプリで登録・チャージを行い、QRコードを提示すると支払いが完了します。
にゃんPayを使えば、宅急便の発払い料金が12%割引されるため、非常にお得です(一部サービスを除く)。特に、定期的に荷物を送る事業者には大きなコスト削減の効果が期待できます。
また、金融機関口座から直接チャージできるため、現金を用意する手間も省けます。アプリで手軽に利用できるので、発送作業の効率化にもつながるでしょう。
デジタル割
送り状をスマートフォンやパソコンなどで事前に作成すると、1個につき60円の「デジタル割」が適用されます。対象となるのは、「宅急便をスマホで送る」サービスや「らくらく送り状発行サービス」、「自宅で送り状発行」などです。
紙の送り状を使用するのではなく、デジタルで情報を登録することで業務の効率化が図れるため、その分送料がお得になる仕組みです。スマホアプリやパソコンに慣れている方には、簡単かつ便利な節約方法といえるでしょう。
往復割引
「往復割引」は、ヤマト運輸の「往復宅急便」を利用する際に適用される割引制度です。往復分の送り状を同時に発行し、往路と復路の配送をセットで依頼すると、1個につき200円の割引が受けられます。
旅行の荷物や修理品、スキー・ゴルフ用品など往復配送が便利な場合に活用されます。発送と返送がセットになっているため、手間が減るだけでなく送料も安くなるお得なサービスです。
複数口減額制度
「複数口減額制度」は、同じ届け先に2個以上の荷物を同時に送る場合に適用される割引サービスです。1個につき100円の割引が受けられるため、まとめて荷物を発送したいときに便利です。
引っ越し時や大口の荷物を送る際に活用すると、送料が抑えられる上、複数の荷物がスムーズに到着するメリットもあります。企業や個人問わず、まとめて送る場面に役立つ制度です。
送り状はヤマト運輸の「複数口専用送り状」を使用します。送り状の発行方法は公式サイトや営業所で確認できます。
営業所受け取りサービス
自宅ではなく営業所で荷物を受け取る「営業所受け取りサービス」を利用すると、1個につき60円の割引を受けられます。営業所の営業時間内であれば自分の都合のよいときに荷物を受け取れるため、不在が多い人には便利なサービスです。
また、宅配ボックスがないマンションや、家族に見られたくない荷物を受け取るときにも活用できます。割引も受けられる上、再配達の手間も省けるので一石二鳥といえます。ヤマト運輸の公式サイトやアプリから簡単に受け取り場所を指定できるのも嬉しいポイントです。
宅急便のお届け日数

宅急便のお届け日数は、荷物を送る場所と届け先の距離によって異なります。多くの場合は、発送日の翌日か翌々日には配達されます。また、ヤマト運輸では土日祝日も配達を行っており、平日忙しい人にも便利です。
正確な日数を知りたい場合は、ヤマト運輸のウェブサイトの「料金・お届け予定日を調べる」から日数を調べることもできます。発送元と届け先の郵便番号、発送予定日を入力するだけで、到着予定日や配達時間帯が確認できます。
宅急便の発送手順
宅急便を送る手順は、荷物の梱包、送り状の準備、発送の3つのステップに分かれます。個人・ビジネスに関わらずスムーズに発送できるよう、さまざまな付加サービスがあります。
1. 荷物の梱包
宅急便を送る際は、まず荷物の内容に応じてしっかりと梱包する必要があります。壊れやすいものには緩衝材を使い、水濡れしやすいものはビニール袋に包むなどしましょう。
ヤマト運輸では、荷物の破損を防ぐための梱包方法を紹介しており、荷物サイズに合った段ボールの使用を推奨しています。また、規格に合わせるために3辺合計が60cm~200cm、重さは最大30kg以内に収めることも必要です。不安な場合は営業所で梱包資材の購入やアドバイスも受けられます。
参考:梱包資材の購入 | ヤマト運輸
参考:荷物の梱包方法の基本 | ヤマト運輸
2. 送り状の記入
送り状は荷物の届け先や品名などを記載する伝票です。スマホやPCを使って印刷も可能で、アプリや営業所の店頭端末ネコピットを利用すれば手書きの手間が省けます。
法人利用では、ヤマト運輸が提供している送り状発行システム「B2クラウド」が便利で、大量の送り状を効率よく発行できます。「B2クラウドAPI」を活用すれば、業務システムとの自動連携も可能です。
Ship&coなら、このB2クラウドAPIと直接連携できるうえ、ヤマト運輸だけでなく佐川急便・日本郵便など複数の配送業者をまとめて管理できます。送り状の発行から配送ラベル管理までを一元化できるため、出荷作業の大幅な効率化に貢献します。ビジネスの効率化を図るなら、Ship&coのデジタルツールの導入がおすすめです。
3. 荷物の発送
荷物の発送には複数の方法があります。下記の表に代表的な集荷方法をまとめました。割引や利便性を考慮し、自分に合った方法を選びましょう。
関連記事:ヤマト運輸でEC店舗の注文を発送するときに知っておきたいこと
参考:発送方法・お支払い方法 | ヤマト運輸
宅急便のメリット
宅急便には、多くの便利な特徴があります。
・全国翌日配達が可能なスピード感
離島を除く全国ほぼすべての地域において、最短で翌日配達が可能で、急ぎの場合にも便利。
・荷物の追跡が簡単
伝票番号を使って、インターネットやアプリでリアルタイムに配送状況が確認できる。
・集荷サービスが便利
自宅や会社まで荷物を取りに来てくれる「集荷サービス」が利用可能。持ち込み不要で手間がかからない。
・補償制度が充実
万が一の破損や紛失に備えた補償制度があり、荷物1個につき30万円までの損害をカバー(通常の宅急便の場合)。
・配送オプションが豊富
さまざまなニーズに合わせ、多くの配送サービスがある。
・再配達依頼が簡単
スマホやPCから簡単に再配達の依頼ができる点も、利用者にとって大きなメリット。
宅急便のデメリット
宅急便は便利な反面、いくつか注意すべき点もあります。
・比較的送料が高め
小型・軽量の荷物を送る場合は、他の配送手段(例:ネコポス、クリックポスト)の方が割安になることが多い。
・料金が分かりにくい
荷物のサイズや重量で料金体系が細かく区分されており、分かりにくいという声がある。
宅急便以外のヤマト運輸のサービス
ヤマト運輸では、通常の宅急便に加えて荷物のサイズや温度管理のニーズなどに応じた専用サービスが用意されています。
宅急便コンパクト
宅急便コンパクトは、60サイズより小さな荷物を手軽に送れるサービスです。専用のBOXを購入する必要がありますが、宅急便と同様に対面での配達で最大3万円の補償がついているため、安心して利用できるでしょう。
書類や雑貨などの配送に適しており、ネットショッピングの商品発送やちょっとしたギフトの送付にも便利です。料金は通常の宅急便より安価で、コストを抑えたい方にもおすすめです。コンビニやヤマト運輸の営業所などから発送できます。
クール宅急便
クール宅急便は、冷蔵または冷凍状態を保ったまま荷物を届けるサービスです。冷蔵タイプは0~10℃、冷凍タイプは-15℃以下の温度帯で管理されており、鮮度が重要な食品や生ものなどを送るのに最適です。
通常の宅急便料金に加えてサイズに応じたオプション料金が必要ですが、品質を保持できる安心感があります。農産物やスイーツなどの発送にも多く利用されており、個人から業務用まで幅広い需要があります。
クロネコゆうメール
クロネコゆうメールは、カタログ・パンフレット・書籍などの印刷物を送付先の郵便受けに配達するサービスです。厚さ2cm以内、重さ1kg以内の荷物が対象で、信書は送れません。日本郵便の配送ネットワークを活用することで全国への配達が可能となっています。
クロネコゆうメールの利用にはヤマト運輸との法人(掛売り)契約が必要で、追跡機能はありませんが、コストを抑えて大量に印刷物などを送りたい場合に便利です。企業の資料送付や販促物の郵送に多く利用されており、郵便受けに届くため受け取る側も手間がかかりません。
クロネコゆうパケット
クロネコゆうパケットは、ヤマト運輸が荷物を預かり、日本郵便のネットワークを使って郵便受けに配達するサービスです。3辺の合計が60cm以内で、最長辺が34cm以内、厚さは3cm以内、重さ1kg以内という制限があり、軽量かつ小型の商品の発送に向いています。
ヤマト運輸との法人(掛売り)契約が必要で、主にネットショップでの配送に利用されています。配達は追跡可能で、郵便受けに届くため配達先の不在を気にせずにすむ点も魅力です。全国一律料金でコストも低く、安定した配送品質を求める方におすすめのサービスです。
ネコポス
ネコポスは、ヤマト運輸と契約のあるメルカリやラクマなどのサイトで取引を行う個人や、法人契約を結んだ会社などが利用できる小型荷物専用のポスト投函型配送サービスです。送れる荷物は縦23cm~31.2cm、横11.5cm~22.8cm以内のサイズで、厚さは2.5cm以内、重さは1kgまでの制限があります。
宅急便レベルのスピードで最短翌日配達が可能な上、追跡機能もついています。受け取りの手間がなく、ECサイトや個人間取引の配送にも人気です。クロネコゆうパケットとの違いは、サイズ制限や通知の有無、配達スピードなどにあります。
参考:ネコポス | ヤマト運輸
参考:よくあるご質問(FAQ) | ヤマト運輸
宅急便・ゆうパック・飛脚宅配便の料金比較
宅配サービスを選ぶ際、気になるのが送料の違いです。ここでは、ヤマト運輸(宅急便)、日本郵便(ゆうパック)、佐川急便(飛脚宅配便)の東京都間の配送料をサイズ別に比較します。
東京都間の配送料金比較(2025年7月時点)
全体的に見ると、日本郵便(ゆうパック)がやや割安な傾向にあります。しかし、送料だけでなく、集荷の有無や到着日数なども加味して選ぶことが大切です。
参考:宅急便運賃一覧表:全国一覧|ヤマト運輸
参考:ゆうパック|日本郵便
参考:飛脚宅配便・飛脚ラージサイズ宅配便 関東からの料金一覧|SAGAWA
まとめ
ヤマト運輸の宅急便は、全国対応の信頼性や多彩な配送オプションが魅力です。ただし、荷物のサイズや重量によって料金が変動するため、事前に確認することをお勧めします。宅急便以外にもさまざまな配送サービスがあるため、自社のニーズに合ったサービスを選ぶとよいでしょう。
業務効率を高めるには、送り状の発行をシステム化するのも一つの方法です。ヤマト運輸では、スマートCat(イージー出荷)という法人向け送り状発行システムを提供しており、配送業務の効率化に役立ちます。
さらに、ヤマト運輸以外の配送業者も利用している場合は、複数キャリアに対応したShip&coのツールを活用することで、送り状発行や国内外の発送管理を一元化できます。スマートCatがヤマト運輸専用であるのに対し、Ship&coは佐川急便、日本郵便、FedEx、DHLなどにも対応しており、国内外の発送の一括管理が可能です。